本日三月三十一日を以て「種子法」の効力が消える。「お種子法」とは、各都道府県が米をはじめとした作物のタネについて、責任を以て開発、維持管理するというものだ。この法律が廃止されたことにより、都道府県が予算、人員等を割く法的根拠が消失した。これは安倍政権のグローバル企業優遇、大企業優遇の農業政策の氷山の一角であり、漁業なども併せてグローバル企業優遇、大企業優遇が規制改革、成長戦略の名を以て行われている。
各都道府県が米をはじめとした作物のタネについて、責任を以て開発、維持管理することに対して、農水省は十年前、民間の参入を妨げる者ではないという見解を出していた。ところが今回はそれを翻し、規制廃止に同調した形となる。現在、三百種米の品種のタネが保存管理されているが、今後は民間企業の効率化、市場の論理により品種が少なくなることが想定される。そうなると気候変動や害虫の増加などの異常事態に対応できなくなる。
また、種子法廃止後実際にタネの育成を民間が担うわけだが、「民間」とは実質的に世界最大の種子企業モンサントである(わが国では住友化学がモンサントのパートナーとなっている)。モンサントはベトナム戦争の際に枯葉剤を開発したことでも知られる「世界最悪の企業」「モンサタン」とも呼ばれる企業である。種子法廃止の背景には、同社が進める遺伝子組み換え食品事業、ゲノム編集事業を推進する魂胆が伺える。遺伝子組み換えやゲノム編集は本当に安全なのか、まだ科学的結論が出ていない。また、そもそも同社が遺伝子組み換えを進める動機の一つに、同社が開発する強力な除草剤をセット販売することがあり、そうした(発がん性を持つ)除草剤の残留による影響などを考えても大いに「食の安全」に悪影響を及ぼすと考えられる。
安倍政権は内閣人事局で官僚幹部人事に官邸の意向を介入させ、自らの政策に都合の悪い官僚を左遷させ、グローバル資本に便宜を図り続けてきた。現在の農水次官は「農水省はいらない(経産省の一部でよい)」と放言する人物である。国際的な流れとしては、協同組合や家族農業の再評価が進んでいたり、欧州を中心として有機農業へのシフトが進んでいる中、わが国の政策はこうした国際的な流れにも反している。農業は単純に植物を栽培することによる産業というだけでなく、文化や景観の維持、治水など様々な機能を持っている。こうした働きを忘れてはならない。
正直に言って情勢はかなり厳しい段階にあるが、今後反転攻勢に出る手段として、食糧安全保障法を作る、種子条例を各都道府県で作る、種子法廃止違憲訴訟、住民の反対運動などが行われており、そうした動きを進めていく必要がある。その後、質疑応答が行われ、活発な議論、意見交換が行われた。