李來榮(イネヨン)高麗大学校教授講演摘要

 去る7月8日、早稲田大学で李教授による「韓国人のナショナルアイデンティティと北朝鮮・南北統一への認識変化」と題する講演を聴いた。

我流に内容を摘記要約すると、

・世論調査の結果、近年の北朝鮮による挑発行動を受けて、大部分の韓国人が北朝鮮住民に対する強い同胞意識を持つ一方、北朝鮮体制への距離感と不信感を高めている。

・韓国人のなかですら、若い世代は北朝鮮を「他人」と見なす比率が高まっている。また米日に住む同胞への親密感が高まった反面、中露、北朝鮮に住む同胞へのそれは低下している。

・対北朝鮮経済支援を拡大するという態度よりは、これを減らすか、支援をすべきではないという意見、また20代30代の回答中、あえて南北統一する必要がないという慎重意見に世論が硬化。

・その根拠かわからないが、北朝鮮の将来に対する否定的な見方が多数。しかし北朝鮮の崩壊は既定事実としながらも、時間がかかるだろうという意見が過半数。

・05年の調査で、統一の妨げになる国家の筆頭はアメリカだったが、10年には、北朝鮮に次いで中国が取って代わった。

 

感想・・・韓国による北朝鮮に対する「太陽政策」は失敗したが、だからといって従来の「封じ込め」政策の効力も疑わしい。「封じ込め」政策の根底には、待てば敵が自滅するという前提があるが、中国の北朝鮮に対する支援が続く限り、そうした前提は成立しないだろう。むしろ時間は中国の影響力が北朝鮮に浸透する余地を与えるだけのようにも思える。

 

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