石原慎太郎的「憲法無効論」への疑惑

石原慎太郎氏の持論である憲法無効論は現行憲法に対する内容的な批判というよりも手続き的な批判である。つまりそれは、わが国に主権がないときに占領国たるアメリカによって一方的に押し付けられたものだから無効だというのが主な理由であって、現行憲法の国民主権という内容に対する批判は含まれていない。だから、彼らは平気で、憲法破棄の後に、国民の手で自主憲法を制定するなどと抜かすのである。これは石原氏のみならず、憲法無効論を主張する論者のほとんどがそうではないだろうか。

 

しかし考えてもみてほしい。かりに彼らの主張どおり、現行憲法が無効になったとしたら、それは必然的に帝国憲法が有効なものとして復活することになるが、周知のように帝国憲法は天皇主権である。とすれば当然に憲法制定権力は国民ではなく、天皇に由来することになり、国民が憲法論争に容喙すること自体不敬、ましてや国民の手で新憲法を制定するなど、天皇大権の侵犯以外の何物でもないのである。

 

とすれば、現行憲法が不当である所以は、それが国民の自由意思によって制定されなかったことにあるのではなく、天皇の叡慮を蔑ろにして制定されたことにあるというべきである。憲法制定は天皇大権である。よってその無効を宣告し、これを破棄するのは国民投票ではなく、天皇の勅命でなければならない。その点よろしく、と無効論者に言ってやりたい。

 

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