石原慎太郎的「憲法無効論」への疑惑

石原慎太郎氏の持論である憲法無効論は現行憲法に対する内容的な批判というよりも手続き的な批判である。つまりそれは、わが国に主権がないときに占領国たるアメリカによって一方的に押し付けられたものだから無効だというのが主な理由であって、現行憲法の国民主権という内容に対する批判は含まれていない。だから、彼らは平気で、憲法破棄の後に、国民の手で自主憲法を制定するなどと抜かすのである。これは石原氏のみならず、憲法無効論を主張する論者のほとんどがそうではないだろうか。

 

しかし考えてもみてほしい。かりに彼らの主張どおり、現行憲法が無効になったとしたら、それは必然的に帝国憲法が有効なものとして復活することになるが、周知のように帝国憲法は天皇主権である。とすれば当然に憲法制定権力は国民ではなく、天皇に由来することになり、国民が憲法論争に容喙すること自体不敬、ましてや国民の手で新憲法を制定するなど、天皇大権の侵犯以外の何物でもないのである。

 

とすれば、現行憲法が不当である所以は、それが国民の自由意思によって制定されなかったことにあるのではなく、天皇の叡慮を蔑ろにして制定されたことにあるというべきである。憲法制定は天皇大権である。よってその無効を宣告し、これを破棄するのは国民投票ではなく、天皇の勅命でなければならない。その点よろしく、と無効論者に言ってやりたい。

 

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石原慎太郎的「憲法無効論」への疑惑 への6件のフィードバック

  1. 元気 のコメント:

    はじめまして。
    こんばんは。失礼いたします。
    石原慎太郎氏の憲法無効(自主憲法制定?)について、疑問を抱いている者です。
    >だから、彼らは平気で、憲法破棄の後に、国民の手で自主憲法を制定するなどと抜かすのである。
    私もそのように思います。
    >かりに彼らの主張どおり、現行憲法が無効になったとしたら、それは必然的に帝国憲法が有効なものとして復活することになるが
    そうであると思います。
    >周知のように帝国憲法は天皇主権である。
    本当に天皇に主権があったのでしょうか。
    戦後の国民主権と対比するため(方便として?)、「天皇主権」と周知されているように捉えています。
    「天皇に主権がある」 とする根拠が分からないのです。
    大日本帝国憲法、4条「天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リテ之ヲ行フ」
    とありますが、解釈が違った(周知でなかった)からこそ、天皇機関説論争があったのではないでしょうか。
    天皇主権ならば、
    第55条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責メニ任ス
     凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス
    第56条 枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス
    は、必要ない条文であると思うからです。
    ならば、大日本帝国憲法に原状回復した後、大日本帝国憲法を天皇の発議によって改正する。
    というのが正当な手続きであると思うのですが、いかがでしょうか。
    >憲法制定は天皇大権である。よってその無効を宣告し、これを破棄するのは国民投票ではなく、天皇の勅命でなければならない。
    その通りであると思います。
    けれど、(憲法同様変更することの出来ないはずの)皇室典範が変えられています。
    天皇の勅命は、(畏れながら申し上げます。)ありえますでしょうか。

  2. 折本龍則 のコメント:

    回答①
    元気さん
    コメントありがとうございます。
    大日本帝国憲法が天皇主権であることは、第一条の「大日本帝国は万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」に示されていると思います。伊藤博文が書いた帝国憲法の注釈書である『憲法義解』を読みますと、この第一条は天照大神が天孫、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に与えたとされる「天壌無窮の神勅」、すなわち「豊葦原(とよあしはら)の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂の国は、是(こ)れ吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるべき地(くに)なり。宜しく爾皇孫(いましすめみま)、就(ゆ)きて治(しら)せ。行矣(さきくませ)、宝祚(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさむこと、当(まさ)に天壤(あめつち)と窮(きわま)り無かるべし」、意味は「この日本の国は、私の子孫が君主たるべき国である。さあ瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)よ、行って、しっかりと
    治めなさい。つつがなくお行きなさい。天つ日嗣(あまつひつぎ・寶祚…天皇の御位)は、天地と共に限りなく栄えるでしょう」(https://plaza.rakuten.co.jp/izanagishintou/diary/200709200000/)を踏まえたものであることが分かります(http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1267849)。
    もっとも一概に主権といいいましても、その解釈や行使の仕方は国や時代によって開きがあるのも事実だと思います。
    →続く
    >

  3. 折本龍則 のコメント:

    回答②
    貴兄が指摘された第四条の「この憲法の条規によりて」云々は、機関説の法的根拠になっていたのですか?もしこの辺の事情をご存知であればご教示下されば幸いです。
    第55条については、私もこれは天皇主権の原則と聊かの矛盾があるように思います。大臣が輔弼するところまでは、あくまで大権の補翼なのでいいのですが、その責めに任ずとまで書いてしまうと、論理的に辻褄が合わなくなると思います。
    第56条については、枢密院というのはあくまで天皇直属の諮問機関、つまり参考意見を聴取するための機関に過ぎませんので、天皇主権との間に矛盾はないと考えます。
    上記の通り、帝国憲法とて万能ではありませんので、貴兄が仰るように、天皇の御名において現行憲法を廃した後、現代の要請に応じて改正する必要があると思います。また現行の皇室典範は一般の法律と同じく国会の議決で変更できるようになっています。しかしそれは現行憲法の第2条でそう定めてあるからでありまして、だからこそこうした大変不敬な事態を解消するためにも、現行憲法は廃止せねばならなのだと思います。やれるかやれないかは私には分かりませんが、少なくとも
    やらねばならない、それが50年かかろうが100年かかろうが、命ある限り努力せねばならない、それが天皇陛下を主君に戴く我々国民の務めであると思っております。
    以上拙い回答ですが、今後とも宜しくお願いいたします。

  4. 元気 のコメント:

    こんばんは。
    丁寧な回答、ありがとうございます。
    「主権」なんとなくとか、イメージとかで使っているような気がしています。
    ノモス主権論というのもあるそうですね。
    戦前は天皇に主権があり、戦後は国民に主権がある。
    というのも(誰かを利するための)イメージである可能性もあると考えています。
    こちら、参考になれば幸いです。
    【國體の下に 5 すべては國體の下に】
    http://inosisi80.iza.ne.jp/blog/entry/129507/
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    戦前、政体に対する言葉として國體という言葉が用いられました。
     しかし、ここでいう國體は、「主権は誰に属するのか」といった、政治の形態(政体)についての論議の中で使われたものでした。
     当時の国法学や憲法学の本にも、國體とは「統治権の所在によって分かれる国家の特色を言う」とあり、また政体については「統治権行使の形式によって分かれる統治の体様をいう」とあります。
     簡単にいえば、國體は「主権のあるところによって決められる=誰がこの国を支配するか」で、政体は「その主権をどう使うか」ということになります。

    もはやわが国だけでなく、よその国においても、複雑化する政治のありようを無視して、「誰が主権をもっているか」ということを簡単に決めたり、特定の主権者を「絶対なもの」としたり「誤りを犯さないもの」としてとらえることは通用しなくなってきています。

    このことでノモス主権論の先見性に気づくことができ、主権をもっているのは、天皇でも国民でも、ましてや国家でもないことがわかります。
    ----------------------------------------------
    続く

  5. 元気 のコメント:

    続きです。
    私は、戦前は天皇主権だったと考えることは安易ではないかと考えています。
    1946年当時、GHQの書いた日本国憲法についての検討会(建前は、帝国憲法改正案枢密院審査委員会)で、当時の委員の苦悩と混乱が見てとれるからです。
    公職追放という脅し(生活基盤の危機?)の下、それでも国体(日本国のあり方)を守ろうとした人々の苦悩と混乱です。
    主権の所在について、よろしければ、こちらもご参考に。
    【<極秘> 「帝国議会に於ける憲法改正案審議経過」 8/18】
    http://muumintani-irasyai.blog.so-net.ne.jp/2011-02-13-4
    【<極秘> 「帝国議会に於ける憲法改正案審議経過」 9/18】
    http://muumintani-irasyai.blog.so-net.ne.jp/2011-02-18
    【<極秘> 「帝国議会に於ける憲法改正案審議経過」 10/18】
    http://muumintani-irasyai.blog.so-net.ne.jp/2011-02-20
    【<極秘> 「帝国議会に於ける憲法改正案審議経過」 11/18】
    http://muumintani-irasyai.blog.so-net.ne.jp/2011-03-08

  6. 折本龍則 のコメント:

    親切なご教示、ありがとうございます。
    勉強いたします。
    折本拝

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