拘幽操師説 浅見絅斎講述 若林強斎筆録2/5

忠ハ中心トモ書キ、ドコマデモ、君ガ大切デナラヌト云本心ノヤムニヤマレヌ意味カラノコトゾ。爰ヲ目当トセネバ、一人扶持トルモノモ、ドウモ奉公ハナラズ、何ドキ長田ニナラウヤウ、明智ニ成フヤラ知レヌゾ。ソレユヘ常人ヨリイヘバ、コレヲ目アテトシテ、若シ一念君父ヲ怨ム心ガキザサバ、ヤレ、コレガスグニ君父ヲ弑スルノ心ヂヤハト、イタクコラシ、イマシメテ、此意念ノ根ヲ抜キ、源ヲ塞ヒデ、君父ガ大切デ止レズ、真実愛シウテナラズ、イカ様ナコトイモ、ウツシカヘラレヌ迄ノ本心ヲ得ル迄ガ、此「拘幽操」ノ吟味ゾ。拘ハ、カカヘルトモ、トラヘルトモ訓ズ。トラヘテ牢ヘ入ルコト。幽ハ、幽闇トテ、人跡ノ絶ハテタ、鳥ノ声モセヌ様ナ処ノコト。ソコニ文王ヲトラヘテヲイタゾ。文王ハ殷ノ紂ガ代ニハ、西伯ト云テ、西国大名ノ頭デ有タ。紂王ガ悪虐甚ニシテ、天下万民ウトミハテテ、其亡ンコトヲ欲ス。文王ハ聖徳有テ、仁政ヲ行セラレテ、天下コレニ帰服スレドモ、ソムケル諸侯ヲヒキイテ、殷ニ服事ナサレテ、文王デカカヘタル殷紂ガ代ゾ。然ルニ崇候虎ガ讒ヲ用テ、西伯ノ参勤ナサレタトキ、何ノワケモナシニトラヘテ、羑里(ゆうり)ヘ押コメタ。西伯ハヌシノ身ニ少モヲボエノナイコトジヤニヨツテ、常ノ者ナラバ、ココデハ何カト云ワケモセウズ、本ヨリ大キニ怨ルデ有フガ、西伯ニヲイテハ、少シモ讒者ノ故ジヤト云ヤフナ心ナク、微塵モ君ノシカタヲムタイナド云気モツカズ、タダ火ノ常ニ熱ク、水ノ常ニ寒カニ、梅ノ常ニ酸キ様ニ、君ヲ大切ニ思召ス惓繾惻怛ノ心ヨリ外ニ、ミヂンモ他念アラバコソ。我身ニ罪コソアラフズ、罪アレバコソ、コウナサルレ。マタ君ノメグミ故ニ、カウヂヤト思召スヨリ外ナイ。ココガ文王ノ至徳ト云処ニテ、臣子ノ本心ゾ。

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