拘幽操師説 浅見絅斎講述 若林強斎筆録3/5

「論語」ニ至徳ト云コト二ツ出ズ、一ハ太伯、一ハ文王ゾ。皆君臣ノ義ニアヅカルコトデ、至徳タルノ実ハ、君臣父子ノ際ヲハナレテ、外ナキヲ知ルベクシテ、臣子タルモノノ身トシテ、君父ノイトヲシク、ドウモハナレラレヌ味ガ、火ノモヘタガリ、水ノヌレタガルヤウニ、止ニ止レヌ情ガ、桀紂ニモセヨ、誰ニモセヨ、讒ヲ用ルニモセヨ、ドチヘドフシテモ、只イトヲシイヨリ外ナイ。天命ニシタガヒ、人心ニ応ズルト云様ナコトガ、イマ〳〵シフテ、ドウモナラレヌ処ガ至徳ニテ、身カラハヘヌイテ、雁ハ虫ニナツテモ北ヱユクト云様ニ、余義モ余念モ無キヲ、至徳ト云。其至徳ト云ノ余事マゼズニ、ハダカニシテ見セタハ、此文章ゾ。操ハ、琴操ト云テ、琴ニ調ヘ合セテウタフ歌ノセウガ、歌ノ一体デ、ヤハリ歌ト云ト一ツヂヤ。ソレヲ操ト云ハ、操ハミサホトモ、トルトモ訓ム。罪デモ有テ君ニ棄ラルヽハ、其筈ジャガ、罪モ無シ、讒ニ逢テステラルヽ様ナ時ハ、扨モ聞ヘヌコトジャト云様ニ成ラネバヲカヌ。ソノ様ナ時デモ、微塵君ヲ怨ル心無ク、「我ヲ思フ人ヲ思ハヌ報ニヤ我思フ人ノ我ヲ思ワヌ」ト云タ様ニ、真実君ヲ大切ニ思フ惓繾惻怛ノ心ノ、止ニヤマレズ、忘ルヽニ忍ビヌ情カラ諷フ歌ヲ、操ト云。ソレデ常ノ歌ヨリハ、殊ニスグレテ、感慨アルゾ。覆霜操ノ、箕子操ノト云類モ同コトナリ。

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