第三次アーミテージ報告(全訳資料):『米日同盟―アジア安定の鎮台』(2012.8)②

エネルギー保障

核エネルギー

2011311日の悲劇は記憶に新しく、我々は地震と津波、またそれに引き続く核のメルトダウンの犠牲者と被災者に深甚なる弔意を表するものである。福島原発での災難が核利用の大いなる後退を招いたとしても想像に難くない。こうした核の後退は、日本全国のみならず世界中に反響を呼んだ。イギリスや中国が慎重に核利用の拡大計画を再開した一方で、他のドイツのような国は、原子力の全面的な撤廃を決定した。

 日本は手探りで核反射炉を運用し核の安全基準を見直している。世論の原子力に対する強固な反対にもかかわらず、野田佳彦首相は核反射炉の稼働を再開した。これ以上の再稼働は安全確認と地元民の賛成にかかっている。こうした条件下での核エネルギーの生産は、我々の見方では正しく責任あるステップである。

 日本はエネルギー利用の効率化に巨大な足跡を残しエネルギーの調査と開発に関しては世界をリードしている。日本国民がエネルギー消費の節約に目を見張る国民的団結を示しエネルギー効率の最高基準を設定した一方で、核エネルギーの欠如は日本に深刻な影響をもたらすだろう。原子力発電所の再稼働なくして日本は二酸化炭素の排出量を2020年までに25%削減するという目標に向けた意味ある前進を遂げることは不可能である。原子力はいまもそしてこれからも二酸化炭素の排出から解放された電力生産の実質的な源泉であり続けるだろう。環境省のデータは、原発の再稼働なくして日本の排出量は2020年までにせいぜい11%しか削減できないことを示している。しかし再稼働するならば、排出量削減は20%に到達できるのだ。原発を永久に凍結すれば輸入された石油と天然ガス、石炭の消費は増大させる。さらに、国家エネルギー政策の先延ばしは死活的に重要であり同時にエネルギー依存的な国内産業の海外移転を招来し、国民の生産性を阻害するかもしれない。

 同時に原発の永久凍結は、発展途上国が核反射炉を建設し続ける中で、責任ある国際的な核開発の妨げになるだろう。福島の一件以降、一年以上に渡って原子力開発を保留していたシナも、国内における新たな原発建設事業を再開しており、最終的には特異な国際的ベンダーとして立ち現れ得るだろう。シナがロシアや韓国、そしてフランスと一緒に核の平和利用に関する国際的な開発を予定しているので、日本は国際社会が効率的で信頼に足る安全な反射炉と原子力から利益を得るのならば、いまさら後戻りすることは許されないのである。

 一方、米国の側では、核廃棄物の処理をめぐる不確実要因を取り除き、明確な許認可プロセスを実施する必要がある。我々は、福島から教訓を得、総合的な安全基準を実施する必要性があることを充分に認識していながらも、原子力はエネルギー保障と経済成長、そして環境に対する便益という点で厖大な潜在能力を秘めている。日本と米国は、国内的にも国際的にも、安全で信頼に足る核の平和利用を促進することに関して共通の政治的かつ商業上の利益を有している。東京とワシントンは、この領域で同盟を再活性化し、福島から教訓を得、安全な反射炉の設計と着実な規制の国際的実施を推進する指導的な役割を再開せねばならない。3.11の悲劇は経済と環境における甚大な後退の原因となってはならない。安全でクリーンで責任を以って開発ないし活用された原子力は日本の総合的な安全保障の本質的な構成要素になるであろう。この点で、原子力の調査と開発における米日協力は本質的に重要なのである。

 

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