パトリック・ブキャナン論説『海兵隊を召還せよ』

先日取り上げたパトリック・ブキャナン(Patrick J.Buchanan)の論説をもう一つ邦訳掲載する。タイトルは『海兵隊を召還せよ』(『Bring Our Marines Home』。原文はhttp://buchanan.org/blog/bring-our-marines-home-3557

 2010年2月に執筆されたアーカイブであるが、米国内部の有力な在日米軍撤退論として注目に値する。

 

 『海兵隊を召還せよ』

19453月にドイツが降伏してから一か月後、アメリカの目は極東に向けられ、太平洋戦争における最も血なまぐさい戦闘が沖縄で繰り広げられることになった。

82日間の戦闘で12千人の米兵と海兵隊員が戦死したが、これはアフガニスタンとイラクの両戦争における全期間で死亡した兵士の数の二倍にのぼる。

戦闘が集結した数週間後には広島と長崎に原爆が落とされた。また三週間後にマッカーサー元帥は戦艦ミズーリ号上で日本の降伏を受理した。

これらは65年前の出来事であるが、それは米国海軍がダナン島に到達したときから遡ってセオドア・ルーズベルトがサンジュアン・ヒルで戦ったのと同じ位昔の話である。

しかし海兵隊はいまだ沖縄に駐留している。2006年に米国は260億円をかけて8000人の要員をグアムに、それ以外は南部にある普天間の空軍基地からより孤絶した北端にある名護市に移転する取引で合意した。沖縄市民は長い間、普天間での米兵による犯罪や騒音、環境汚染に反対してきた。

問題なのは、上述した取引を取りまとめた自民党が下野し、北京とワシントンの間でより均衡のとれた政策を追求すると公約した民主党が昨年の選挙で勝利したことである。

鳩山由紀夫新首相は、普天間移転合意に懸念を示した上で、それを見直し、3月までに結論を出すと約束した。名護市民は新基地建設反対派の市長を選出した。

今週末、名護市への海兵隊航空基地移転に反対する数千人規模のデモが東京で行われた。なかには、全米軍の日本からの撤退を要求する者もいた。終戦から65年たっても、彼らは我々の退場を求めているのだ。鳩山首相はこうした感情に掉さしている。1月、鳩山首相は、アフガン戦争で8年間継続されてきた米国艦船への給油を中止した。

これらの事実は一つの疑問を浮かび上がらせる。東京が海兵隊を沖縄に置きたくないなら、なぜ留まる必要があるのか。また日本人が海兵隊を自己を守る軍隊ではなく、むしろ公害と見なしているのなら、どうしてそんな厄介者を排除して祖国に追い返さないのか。

一体全体、なぜ我々はいまだに日本を守っているのか。日本は廃墟と化した1945年の国ではなく、いまや地球上世界で二番目の経済大国、最先端技術国の一つである。

我々が冷戦時代に日本を守ったシナ・ソ連ブロックは何十年も前に崩壊した。ソ連はいまや存在しない。シナは今日、日本の主要な貿易相手国である。ロシアとインドはシナと長距離にわたる国境線を接しているが、いずれも米軍に保護を求めてはいない。

もしシナと日本の間で係争になっている東シナ海の尖閣諸島をめぐり両国が衝突したとしても、どうして我々が巻き込まれねばならないのか。

こういうと反論が来る。在日米軍は韓国と台湾を守るためにいる、と。しかし韓国は北朝鮮に二倍する国民を擁し、経済規模は40倍である。また、米国の武器廠にある最先端の兵器にアクセスしやすく、第二次朝鮮戦争の暁には米国空海軍が防御に駆けつける。

しかし第二次朝鮮戦争が起こるとしても、28000人の在韓米軍(そのうち多くはDMZに展開)と普天間の海兵隊はどうして戦死せねばならないのか。韓国は兵士が足らないとでもいうのか。ソウルでもまた、在留米軍の撤退を求める反米デモが繰り広げられてきた。

なぜ我々アメリカ人は、上述の国の国民が我々に求める以上に彼らを熱心に守ろうとするのか。我々が生まれ育った世界から脱却することはそんなに難しいのか。

台湾のケースを見よう。1972年ニクソンの歴史的な訪中のなかで、彼は台湾がシナの一部だと合意した。カーターは北京政府を唯一正当なシナ政権と認めた。レーガンは台湾への武器売却を削減した。

しかし先週、我々はシナの1省であると合意した台湾に対して64億ドルもの武器を売却したと発表した。北京政府(彼らは、我々が蒙っている貿易赤字によって力を蓄えた)は、自ら祖国の一部として取り返そうとしている台湾に対して我々が武器を供与していることにいきり立っている。

イギリスが香港と北京との関係について譲歩したのと同じ関係を今度は台湾が北京に対して志向するのを阻止することによってシナと衝突するだけの価値が我々にはあるのか。

観光や貿易、投資などの面で、台湾は大陸との関係を深化させている。だから今は、台湾との関係を断ち切るときではないのか。

ソ連を例外として、過去10年の間、アメリカほど国力と影響力に関して相対的に衰退した国は歴史上ほとんどない。我々は2つの戦争に縛られ、世界中から嫌われ、GDP10%にも及ぶ財政赤字を計上しているが、その結果負債総額はGDPの金額を上回っている。

ユーラシアから北米大陸、そして祖国への戦略的な撤退は不可欠である。まずは沖縄からの撤退を要求する日本にありがたく譲歩することから始め、さらには日本人に対して丁重に彼らが本土からの米軍の撤退を望んでいるか尋ねよう。 

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