朝鮮問題に関して検証されるべき諸仮説

 朝鮮問題に関して検証されるべき諸仮説

    朝鮮民族は、歴史的に「以夷征夷」式の事大主義と、宗族利己主義、地域間葛藤や酷薄な階級差別で分裂し、熾烈な党派抗争による内憂が近隣大国による干渉や侵略のような外患を交々誘致する形で多大な辛酸を嘗めてきた。それは詰まる所、我が国のご皇室と国民を君臣父子の忠孝一義で結合するような国体に比肩するような民族統合の原理を欠くがためである。

    神代の昔から、日韓は唇歯輔車、特殊緊密な関係を築いてきた。大和王朝は任那や百済を通じて韓半島に影響を及ぼしたが、白村江の戦いでの敗北は、朝鮮の中国への隷属化と、我が国の国家形成という効果をもたらした。大化の改新や明治維新、その後の日清・日露の両戦役も、朝鮮を窓口とする大陸情勢の変容に対応するものであり、朝鮮衰亡の余弊は直接国防上の一大脅威となって我が国の頭上に降りかかってきた。

    明治国家による朝鮮併合は歴史の必然である。しかしそれは民族自決に対する道義的責任を免れるものではない。明治大帝による一視同仁のご聖旨を拝し奉り、皇民化が聊か性急、武断的に過ぎたことは真摯に反省するとともに、一方では朝鮮人の自治拡大を推進した日本人の功績は評価に値する。

    総督府は、韓半島のインフラ整備に着手し、朝鮮を満州・北支への「前方兵站基地」として、国家主導の産業化及び「民族資本」の育成を積極的に押し進めた。その結果、たしかに大戦間期の収支は我が国にとってマイナスであったが、大恐慌以後は「日・満・支経済ブロック」を結ぶ中継基地として有効な戦略的意義を果たした。

    戦後における韓半島の南北分断は、積年の地域間葛藤の延長である。朴正熙と金日成は、共に民族主義の立場から朝鮮の宿痾である事大主義の克服を目指し、前者は維新体制下での核開発、後者は主体思想に基づく「強盛大国」路線を推し進めたが、いずれも宗族利己主義、地域葛藤、階級差別、大国の干渉の壁に阻まれ挫折した。北朝鮮は我が国の国体を模範とした「疑似天皇制国体」を創出しようとしているが、現出したのはおよそ似て非なる家産国家に過ぎない。

    北朝鮮が国際的に孤立化する一方で、中国の勢力が鴨緑江以南に浸透している。羅津港の租借や開城工業団地の開発、中国軍船の元山寄港など、軍事経済的な中朝間の関係が拡大深化する一方で、金氏専制下での極端な先軍政治と非効率な官僚システム、寡少な中国資本の技術的欠乏などの要因が豊富な地下資源の存在にもかかわらず北朝鮮の改革開放と経済発展を妨げている。

    韓国は朴正熙大統領による維新改革の結果、国家主導の産業政策によって「漢江の奇跡」を実現したが、97年のアジア通貨危機で「構造改革」を迫られ、国家と産業の分離、資本と労働の対立を招いた。技術革新は頭打ちし、外資に依存した金融主導の成長が経済を支えている。韓国のこの社会的断絶が、宗族利己主義や地域葛藤の温床となっているが、今後大統領選の帰趨によっては、朴大統領の政策に回帰する可能性もある。

    昨年のQDRで示唆された米軍の後退縮小トレンドは、先般の米国債格下げで拍車がかかった。アメリカの極東戦略は「ハブ・アンド・スポーク」を柱とする挑戦国の「封じ込め」と「関与」の組み合わせであるが、それはドルの信認とアメリカの輸出市場が持つ包容力に支えられていた。例によってアメリカは、道義的確信で地政学的な合理性を歪め、中共の台頭に対する有効な「封じ込め」を怠る気配だが「関与」策を打つ戦略基盤も失われている。

 

 

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