第三次アーミテージ報告(全訳資料):『米日同盟―アジア安定の鎮台』(2012.8)④

メタンハイドレード:エネルギー代替への潜在性が期待され、国際協力の向上に値する機会

 

二国間協力で長期的には将来を約束されていながら未だ行く末が不確実な分野はメタンハイドレードである。メタンハイドレードは地中深くにある氷の層に取り込まれた天然ガスの結晶である。もし経済的かつ技術的に大きなハードルが克服されるならば、メタンハイドレード資源は従来のあるいはそうでない双方のガスを凌ぐであろう。

 日本の中部沖にあるメタンハイドレード埋蔵庫は国内における天然ガス消費の10年分に相当し、全世界には70億兆立方フィートのメタンハイドレード埋蔵資源はあると見積もられているが、それは現在存在することが証明されている天然ガスの100倍以上であるといわれています。メタンハイドレードは大陸沿岸部と沖合の両方に広く分布しており、特に両極地帯と大陸棚の外に埋蔵しています。専門家が期待するように、もしその埋蔵メタンハイドレードのほんの一部分でも開発されれば、それだけで、現在ある天然ガスを見積もった量を大幅に上回ります。

 日本と米国は大規模なメタンハイドレードの産出のポテンシャルを研究開発することについて緊密に協力しています。5月には米日の試験的な掘採がアラスカの北にある丘陵で行われ二酸化炭素を隔離し地中に留めたまま、環境に良いやり方でメタンハイドレードを採掘することに成功した。最終的にメタンハイドレードが大規模に産出される可能性への関心が高まる中で、我々は米国と日本がメタンハイドレードの資源効率的で環境に配慮した産出に向けた研究開発を加速化させることを勧告する。さらに、米国と日本は代替エネルギーのテクノロジーについても研究開発に取り組むべきである。

 

国際的な石油・ガス共有地の防衛

 予見しうる将来、世界経済は主として化石燃料に依拠し、石油は輸送におけるほとんど独占的な地位を維持するだろう。世界で三番目の石油輸入国である日本と米国は世界的な石油貿易の推移が国際政治における地政学的な不安定化を招き、中東からのエネルギー供給と航行運搬に脅威を与えないということに利益を共有している。カナダや米国やブラジルでの石油産出の増加が、米国の他の地域からの輸入に対する依存を弱めるかもしれない一方で、国際石油市場における次なる主要な変動は、益々裕福になっていくアジアの消費者に向かって、中東で産出された石油とガスが怒涛のように流れ込むことのように見受けられる(もっとも、中東でのエネルギー消費の上昇は輸出と競合するが)。将来における石油の供給と需要に関する現在予測は、ペルシャ湾が過去の40年間よりも今後40年間、なお一層世界での石油供給に関して重要な役割を果たすことを示唆している。同様にペルシャ湾はLNGの死活的な供給経路である。カタールのラス・ラファン(Ras laffan)液化プラントはLNG貿易の三分の一を賄っている。

 ペルシャ湾からのエネルギー供給に対して世界が依存を強め、同湾からアジアへ更にエネルギーが流れ込むことは、世界共有地を守ることへの重要性を高めるだろう。日本の海上自衛隊艦船は2009年にソマリア沖での海賊対策任務を開始し、311以降、電力生産のために石油需要が高まっているにもかかわらず、日本は米国の制裁を遵守し2012年の最初の5か月でイランからの石油輸入を三分の一減らした。さらに一歩を進めて、海賊を退治し、ペルシャ湾の航行を保護し、地域の平和に対する脅威、なかんずく目下イランでの核開発のような脅威に立ち向かい、さらにはシーレーンを防衛することへの多国間での努力に、東京が一層参加していくことは、必要であると同時に歓迎されるだろう。

 

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