近隣諸国との関係
強固な米日韓関係
同盟と地域の安定と繁栄にとって死活的に重要なのは強固な米日韓関係である。アジアにおける三つの民主国家間での同盟は価値と戦略的利益を共有している。この同盟の基盤に立脚して、ワシントンと東京、ソウルは一致協力して北朝鮮による核兵器開発を抑止し、シナの台頭に最も的確に対応した地域環境を形成するための外交資本を担保しておくべきである。
三国が国際システムにおける将来的なルールを定義することに深甚な関心を抱いている領域は原子力である。シナが原子力開発の上位国になるにつれ、日本や韓国のような同盟国(両国は世界市場の中で重要なアクターである)は、これに対する的確な防御策と拡散防止策、さらには原子力の生産に関する高度な透明性の基準を確保することが死活的に重要になるだろう。米国の原子力の部門における足取りが、同国の政策の不確実性、好ましからざる経済状況(主として天然ガス価格の低落による)、韓国との123合意更新の失敗によって後退しているため、東京とソウルが、国際的な原子力生産の基準を定義することに重大な役割を引き受けることは取り分け時宜に適っている。日本が安全な原子力に再びコミットし、韓国が国際的な原子力供給国として透明性や不拡散に関する高度な基準にコミットすることは、現在のレジームの将来を確かならしめるために決定的に重要となるであろう。
もう一つ、三国間が協力する分野であるのは、海外開発支援(ODA)である。米国は現在日本および韓国と、戦略的な開発支援に関して合意している。三国は全て開発を相似した観点で捉え、それぞれが主要な国際支援供給国である。韓国は当初、紛れもない世界の被支援国であったが、正真の支援国になった。今日、最大の被支援国はアフガニスタンとベトナムであり、両国は米日双方にとって戦略的に重要である。韓国は現在、世界中で開発とグッド・ガバナンス事業に従事し、若い男女からなる4000人の精鋭がそろった独自の平和部隊を持っている。三国は世界中で戦略的な開発を促進することによって、彼らのヴィジョンと資金を協力的な事業に傾けることから恩恵を受けるであろう。
共通の価値と共通の経済的利益に加えて、米国と日本、韓国は国防上の関心を共有している。三国が収斂する中核的領域において、これらの民主国家は自然と同盟を形作るのである。しかしながら、三国間の間に存する短期的な差異は、北朝鮮の核兵器開発を抑止しシナの再興に最も適した地域的環境を促進するという最も必要な三国間協力の進展を妨げる。
米国政府がセンサティブな歴史問題に対して審判を下すべきではない。しかし米国は緊張を緩和し同盟国の注意を中核的な国防上の利益及び将来に振り向けるために最大の外交的努力を尽くさねばならない。同盟がその潜在性を最大限に発揮するために、日本が韓国との関係をこじらせ続けている歴史問題と向き合うことは本質的に重要である。我々は、そうした問題が持つ感情的かつ国内政治的ダイナミズムを理解しているが、最近の韓国最高裁による個人賠償請求の聞き入れ容認といった政治的行為や、日本政府による慰安婦碑の建設阻止に向けた地元米国役人へのロビー活動のような努力は、単に感情を燃え立たせ、韓国と日本の指導者および両国の国民をして、彼らが共有し協働すべきより広汎な戦略的優先事項から引き離すだけである。
ソウルと東京はリアルポリティークのレンズを通して両国間の紐帯を今一度再検討すべきである。歴史的な反目は戦略的にはどの国も脅かしてはいない。民主国家である両国は、経済的、政治的、防衛的利害関係を有していれば、上述した問題に関して戦争に至ることはないだろう。しかし北朝鮮の好戦性とシナの軍事力、潜在能力、そして自己主張的な態度は、両国に本当の戦略的挑戦を課しているのである。2010年以来、北朝鮮による核ミサイルの脅威は、韓国海軍の艦船「天安」の撃沈や延辺島の砲撃といった従来型の軍事的挑発行動によって増幅している。金正恩による直近の長距離ミサイル実験や軍部との権力闘争は北東アジアの平和を沮喪せしめる。同盟国は、歴史認識における根深い相異をほじくり返し、国内政治上の目的のためにナショナリスティックな感情を利用する誘惑を退けるべきだ。また同盟国は、歴史問題に立ち向かう非公式なトラック2の取り組みを拡大すべきだ。そうした会合の幾つかは現時点で存在するが、参加国は共通の規範と原則及び歴史問題における双方のやり取りをまとめた合意文書に準拠して行動し、これらの考えをそれぞれの政府に持ち寄るべきである。
2012年6月における米日韓三国の海軍共同演習は、歴史問題を棚上げし、現在のより大きな脅威に対処する正しい方向性での進展を代表している。付言すれば、東京とソウルが北朝鮮に関するインテリジェンス情報をシステマティックに共有することを可能にする軍事情報面での総合安全保障に関する取り決め(GSOMIA)や、軍事調達の共有化を促進する軍事的総合的調達に関する取り決め(ACSA)といった保留中の防衛協定に速やかな結論を下すことは、同盟国における安全保障上の利益に役立つ実践的にして有効な軍事的な取り決めとなるだろう。