シナにとって尖閣は外洋進出の橋頭保たるべき核心的利益であるから、何れかのタイミングでこれを奪取すべき軍事行動に出でるのは、遅かれ早かれ時間の問題である。
そこでもし尖閣有事でシナが勝利し尖閣を占領するとしたら、それは米国が局外中立を決め込むという前提条件が満たされた場合のことである。その場合、非核保有国である我が国は、当然、核恫喝によってシナの侵攻を抑止する事が出来ないから、一敗地に塗れたまま泣き寝入りする他ないであろう。しかし、この屈辱によって国内世論は沸騰し、核保有支持に傾斜していくことは間違いないから、結果としてシナは尖閣、米国は友好的な対中関係と引き換えに日本の核武装を招来することになる。
では尖閣有事に際して我が国がシナとの交戦で勝利した場合、シナは通常戦力での敗退を挽回するために核恫喝によって外交的な勝利を手に入れようとするであろう。この恫喝に対して米国が対日防衛の意思を鮮明にして毅然たる介入を果たせば、シナはしぶしぶながらも尖閣から手を引く他ない。しかしシナが我が国に核攻撃した報復として米国がシナ本土に核攻撃を仕掛けるとしたら、今度はシナが米国本土に対する核攻撃を以て応酬する。シナは米国全土を射程に収める核戦力を保持しているのでそれが出来る。しかしこの状況は、日本の主権ないしは主権者を防衛するために米国本土が核攻撃の標的となることを意味するのであるから、米国の主権ないしは主権者の防衛を唯一無二の存在根拠とする米国政府は、当然にシナへの報復を断念し我が国の防衛を放棄するに違いない。よって、我が国は米国によるシナの核抑止を期待できない以上、シナによる核恫喝に屈服し、尖閣の外交的割譲を甘受せざるを得ない。そこでこの屈辱に憤激した国民世論は、我が国がシナの外侮と尖閣の喪失を招いた原因を核の不保持に求め、その反動から核保有支持に傾斜していくだろう。
このように、尖閣有事に際して、自主的な核抑止力を持たない我が国は、通常戦力のレベルでシナに勝っても負けても、結局はシナの核恫喝に屈服し、その結果、核武装の道を選択せざるを得なくなる。