中国の防空識別圏設定に対するアメリカの二枚舌外交

アメリカ政府は、中国による防空識別圏の設定を容認しないと明言したし、実際にB-52爆撃機を識別圏内で、中国への通告なしに示威飛行させた。しかし一方では、アメリカの航空会社に対して、フライトプランを中国当局に提出するように働きかけている。その結果、ユナイテッド航空、アメリカン航空、デルタ航空は中国当局に対してフライトプランを提出してしまった。これは既成事実として、中国が設定した防空識別圏を容認したということだ。

結局、どっちがアメリカの真意なのか分からないが、恐らくはオバマ政権の内部でも意思の統一が図れていないか、それとも日本と中国に対して、敢えてどっちつかずの態度を示すことによって、両者を天秤にかけ、あるいはアメリカに対する「忠誠」を競わせることによって、互いを消耗させ、最後に漁夫の利を得ようとする、伝統的なディバイド・アンド・ルールの外交を仕掛けているのではなかろうか。

よって、我が国としては、アメリカの挙動に一喜一憂するのではなく、またそれとは関係なく、自力で中国の拡大を防圧しうるだけの抑止力を構築することが先決である。しかし逆説的ではあるが、我が国の軍事的自立の最大の障碍になっているのが、日米同盟(対米従属)であることを忘れてはならない。というのも、アメリカは表では我が国の再軍備を歓迎し、対中抑止で協力する風を装いながら、裏では我が国をIAEA・NPT体制でがんじがらめにすることによって、最終抑止力である核兵器だけは絶対に保有させない、というのが対日国策の根本だからである。その代わりに、彼らが日本に与えたのが、平和利用に限定した核エネルギーとしての原発だったのである。つまり、我が国の原発は、母親が泣く子を黙らすために与えた「おしゃぶり」のようなものだ

アメリカは、我が国の再軍備を歓迎しているが、上述のようにそれはあくまで通常兵器の次元の軍備増強に過ぎず、市場では高額で戦場では防戦一方のMDやイージス艦を、アメリカの軍産複合体が我が国に売りつけるための方便に過ぎない。 

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