7月4日、憲政記念館にて『月刊日本』が主催する佐々木実氏の講演会に参加した。以下は講演の要旨。佐々木氏は『市場と権力』(講談社)の著者である。
佐々木実氏講演要旨
安倍首相は本来竹中を経済財政諮問会議の委員にしたかったが麻生の反対で断念した。竹中と麻生は郵政民営化以来の確執がある。安倍はその代わりに竹中を産業競争力会議の民間議員にすると、竹中は同会議で国家戦略特区構想を打ち上げ、それに基づいた国家戦略特区諮問会議を経済財政諮問会議と法的に同格の位置づけにした。これが竹中の巧みさである。
アスカと共に逮捕された栃内がいたパソナの南部代表はアングラとの付き合いが深い。竹中は総務大臣を辞めた直後にパソナの顧問に就任し、パソナは竹中が大臣の在職中に進めていた人材バンク事業を受注した。パソナの接待施設には現職の閣僚や官僚が出入りし、人材派遣を管轄する田村厚相は産業競争力会議で三百億の派遣関連助成金を提案している。
南部が台頭するのは長銀が破綻した98年が契機である。同年には大蔵省に特捜が入り、金融監督庁が発足した。従来のエスタブリッシュメントが崩壊し構造改革論が勃興、労働規制緩和の波に乗る形でパソナは急成長する。
同じ頃アメリカでは従来の国家圧力ではなく、民間企業主導で構造改革推進の外圧を掛ける方針に対日政策を転換しており、竹中はその方針に内応する形で日本国内での存在感を増した。ゴールドマンサックスによる三井住友銀行の増資引き受けもその一例である。
小渕首相が経済財政諮問会議で民間のエコノミストを登用してから、政策決定に対する民間エコノミストの関与が強まり、同会議は以後の市場主義改革の推進母体になった。この方式はアメリカの官民交流の模倣でもあるが、アメリカで政府に食い込んだエコノミストが学問的にも優れた業績を残しているのに対して、竹中はまともな学術論文を記していないどころか、博士論文の剽窃疑惑すら指摘されている。
竹中が優れているのは、政治家と官僚の間に介在し、政策立案・実現をオーガナイズする「官房型官僚」としての能力である。
冷戦終結はイデオロギー対立の終焉とされ、経済学は価値については議論しないという前提があったが、現実に自由主義的な経済政策の根底にはイデオロギーが存在し、竹中はその上辺だけを借用して無知な日本国民を瞞着した。よって竹中問題の本質は、目下の市場主義に対する思想的代案が提示できないことにある。
小生の質疑
安倍首相は何故、竹中に拘るのか。それは首相の意思か、それともアメリカの外圧か。
応答
安倍は景気動向を知るため日経平均しか見ていない程、経済政策に無知。小泉内閣の官房長官として竹中の辣腕を見てきたのも大きいのでは。竹中とアメリカの関係はアドホック。