新東亜論―米国の普遍主義を排す(2009)1

1.アメリカは「文明」の光明、オリエントは「野蛮」の暗闇?

20世紀はアメリカの世紀であったといっても過言ではありません。黄昏行く西欧列強に代わって世界の大国となったアメリカは、二度の世界大戦とその後の東西冷戦に勝利し、前世紀の末葉には他を圧倒する唯一無比の覇権国になりました。それからというもの、アメリカは、市場経済や民主主義の文明的普遍性を強調し、それを世界に輸出すると称して自己の世界支配を正当化してきました。彼らはアメリカの利益こそが世界の利益だといいますが、それは本当でしょうか。そもそも我々の利益とは一体、何でしょうか。

今世紀初頭に発生したいわゆる9・11同時多発テロは、世界に大変な衝撃を与えました。アメリカのメディアは、あの矯激な攻撃をかつてのカミカゼに譬え、「リメンバー・パールハーバー」宜しく、狂信に支配されたイスラム世界への報復を鼓舞しました。しかしアメリカがいうように、彼らの利益が同時に世界の利益ならば、なぜイスラム世界の若者は、自らの命と引き換えにテロをするほどアメリカのことを憎んでいるのでしょうか。それはアメリカがいうように、彼らが無知で独善的な野蛮人だからでしょうか。

 

カテゴリー: 新東亜論(2009) パーマリンク