チャイナリスクが叫ばれる昨今、我が国からインドへの直接投資、企業進出が加速し、さらには折からのルピー安がこうした傾向に拍車をかけることが予想され ています。事実、目下日本企業のインド進出は年間100社のペースで増加しており、対インド直接投資額も2005年に2億米ドルだったのが2011年には 30億米ドルにまで飛躍的に増加していますhttp://www.jetro.go.jp/world/asia/in/stat_06/ http://www.in.embjapan.go.jp/Japanese/Indian_Economy/6%28r%290712.pdf
しかしその一方で、インドにおける昨年度(2012年)の実質GDP成長率を見ると、中国が7.8%だったのに対してインドはたったの4.96%に止まり、今後の経済見通しに疑問符が付されております。 http://planningcommission.nic.in/data/datatable/2504/databook_1.pdf
元来、インド市場は1億人以上といわれる中間層の旺盛な購買力と、廉価な労働力からその前途を嘱望され、BRICSの一翼を担う新興経済国の一つに数えられて来たにも関わらず、大方の期待を裏切る経済成長の鈍化はいかなる要因によるものなのでしょうか。
その有力な要因の一つが、近年猖獗を極めるインフレ、すなわち物価の上昇にあると考えられます。昨年度のインドにおけるインフレ率は8パーセントであり、 現在もデリーの不動産賃料は年率10%ずつ上昇しています。このインフレが、インドの名目GDP成長率からインフレ率を差し引いた実質成長率を引き下げて いるばかりでなく、消費者の購買意欲にブレーキをかけ内需を縮小させる懸念要因となっているのです。先の6月(2013年)に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表したレポート(http://www.murc.jp/thinktank/economy/analysis/research/report_130611.pdf)によると、これまで右肩上がりの増加を示してきた自動車および二輪車の販売台数が2010年以降に鈍化しているとした上で、その要因としてインフレによる金利上昇を指摘しています。
事態を憂慮したRBI(インド中央銀行)は、これまで数度にわたって公定歩合を引き上げ金融の引締めを図ってきましたが、インフレは一向に収束せず、むしろ金利の上昇が企業の設備投資や個人消費を阻害するという逆効果を招いているのです。