ではこうしたインフレはなぜ起こっているのでしょうか。一般にインフレの要因としては、供給に対する需要の超過という実体要因と、通貨価値の下落と いう為替要因が考えられます。まず前者に関して、一国の総需要は開放経済の場合、単純に企業の設備投資と家計消費、政府支出に輸出から輸入を差し引いた分 を足し合わせることで算出されます。インドの場合、急激な人口増加に伴う家計消費の増加が、内需を押し上げていることは推測に難くありません。また後述す るように、政府は雇用創出、インフラ整備を目的とした公共投資のために政府支出を増やし続けており、これは内需拡大の有力な要因となってります。もっと も、これも一層の研究が必要ですが、そうした政府支出の大半は、川下に配分されるまでの間に、その大半が官僚たちによって吸い取られてしまうため、波及効 果が低いことも問題とされているようです。
さて、物価の代表的指標であるCPI(消費者物価指数)の内訳をみると、顕著な上昇を示している のは石油や野菜などの輸入関連品目であることから、昨今のインフレの要因としては前者よりも後者の方が有力であると推測することが可能です。そこで次に後 者の為替要因についていえば、まずインドは近年慢性的な経常赤字(国際収支の赤字)を抱えており、それによる外貨の流出が為替市場におけるルピーの交換 レートを下落せしめ、ひいては石油などの化石燃料や資本財の多くを輸入に頼るインドの生産コストを押し上げていることが考えられます。ある統計によると、 2008年9月に原油1バレル約4500ルピーだったのが、2013年8月には6800ルピーと、僅か5年間のうちに50パーセント以上も上昇していま す。
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