日ロの関係打開の機は熟した

北方領土アメリカに「失望した」我が国が次に向かう先は、資源大国ロシアである。しかし周知のように日露間には北方領土問題の障壁が立ちはだかる。この北方領土問題であるが、実はそのきっけけを作ったのは、またしてもアメリカなのである。そのことについて述べた『月刊日本』(平成24年9月号菅沼光弘氏インタビュー記事)の一節を以下に引用する。

「1956年、当時の鳩山一郎首相は訪ソし、日本が国後島と択捉島を含む千島列島を放棄し、色丹島と歯舞群島の返還によってソ連と平和条約を締結しようとした。だが、その時アメリカが横やりを入れてきた。ダレス国務長官が重光葵外相に対して、「日本が二島返還で決着させるなら、沖縄は永久に返還しない」と言い放ったのだ。いわゆる「ダレスの恫喝」である。

ダレスの目的は明確である。日本の周辺諸国、つまりアジアとの関係を分断し、軍事的にも、経済的にもアメリカに強く結びつけること、これが目的だった。以後、日本外務省は、アメリカの意向を忖度して、一貫して、四島一括返還を主張するようになった。その結果、今日に至るも、日ロ平和条約は締結されていな い。

このように、北方領土問題は主としてアメリカの策略によってもたらされた。こうした歴史を踏まえず、いたずらに四島一括返還を主張しても、日ロ間の対立が深刻化するだけだ。四島一括返還要求は、アメリカを利することにしかならない。」

我が国は、1951年のサンフランシスコ講和条約で、千島列島の領有権を放棄したが、当時の日本政府は、歯舞・色丹は北海道に近くて千島列島に入らないから領有権を認めてくれとアメリカに頼んだのを拒否されている。

しかし米ソ冷戦が始まり、55年にソ連が自陣営拡大のために歯舞・色丹の返還を容認しだすと、アメリカは今度は上述した「ダレスの恫喝」を我が国にかまして日ソの平和条約締結を妨害してきたのである。ソ連からしたら、最初せめて二島だけでも返してくれという立場だったのに、譲歩したら今度は四島返還でなければだめだと態度を変えてきた日本に対して不信感を抱いたとしても致し方ないだろう。関連記事

さて、安倍首相の靖国参拝に失望したアメリカに我が国が失望して以来、いまや日ロ関係打開の機運は熟したいえる。ソチ五輪に先立つ安倍首相の訪ロは、こうした事情も背景にあるのではないか。安倍さんもこれまで相当アメリカには我慢してきた分、今回の靖国の一件は腹に据えかねているのではなかろうか。

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