新東亜論―米国の普遍主義を排す(2009)11

11.伝統文化を共有する民族だけが、国民として国家を組織できる唯一の母胎です。

マルクス=レーニン主義や、リベラル・デモクラシーという近代文明の双生児が、世界帝国に内包された多民族を束ねる神話としての教義的正統性を持ちえなくなった今日、あらゆる国家が国民を統治する唯一の正統性根拠は、伝統文化を共有した国民の民族的一者性を措いて他にありません。したがって、正統性根拠を欠いた多民族国家による支配は、たとえそれらの政府がどんな尤もらしい口実を並びたてたとしても、所詮は国内多数民族による暴力的な少数民族支配であることに変わりはありません。これは迫害された少数民族の政治的経済的自由に対する抗弁しえざる蹂躙であると同時に、国内社会の治安に要する莫大な経済資源の調達を求めた侵略的拡張の動因を形成して近隣の諸外国に安全保障上の脅威を与えます。よって私たちは、道義的且戦略的な目的から、朝野を挙げた忍耐強い働きかけによって、被抑圧少数民族の政治的解放を支援していく必要があるのです。そしてこれらの少数民族が幾多の困難を乗り越え、民族独立の悲願を達成した暁には、東亜域内のバランスオブパワーによって基礎付けられた東亜全局の平和が確立されるでしょう。

 

カテゴリー: 新東亜論(2009) パーマリンク